耳の下は腫れて痛むものの、熱はなく、体のだるさもない。そんな時、社会人として最も悩むのが「仕事は休むべきか、それとも出勤していいのか」という判断でしょう。自分の体調と、職場への責任感との間で、板挟みになってしまうかもしれません。この判断の最も重要な基準となるのは、その耳下腺炎が「他人に感染する可能性があるかどうか」です。そして、その判断は、自分自身では下すべきではありません。必ず、医師の診断に基づいて行動する必要があります。もし、医師の診断の結果、その耳下腺炎が「流行性耳下腺炎(おたふく風邪)」であった場合、たとえ熱がなくても、原則として仕事は休むべきです。おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスは非常に感染力が強く、症状が軽い、あるいは無症状の場合でも、他人にうつしてしまう可能性があります。法律で定められた学校の出席停止のような、社会人に対する明確な出勤停止義務はありませんが、職場内で感染を拡大させてしまうリスクを考えれば、出勤を控えるのが社会人としての最低限のマナーであり、責任です。多くの企業の就業規則でも、感染症の場合は出勤を停止するよう定められています。医師に診断書を書いてもらい、職場に提出して、指示された期間(一般的には耳下腺の腫れが出てから5日間程度)は、しっかりと休みましょう。一方で、診断が「反復性耳下腺炎」や「唾石症」、「化膿性耳下腺炎」など、感染性のないものであった場合は、他人にうつす心配はないため、必ずしも仕事を休む必要はありません。ただし、それはあくまで「感染の危険性がない」というだけであり、あなた自身の体調が許すかどうかが、もう一つの判断基準となります。痛みが強く、仕事に集中できない、食事を摂るのも辛い、といった状態であれば、無理して出勤してもパフォーマンスは上がりません。むしろ、症状を悪化させたり、回復を遅らせたりするだけです。そのような場合は、感染性のない病気であっても、上司に事情を説明し、一日休暇を取るか、早退させてもらうのが賢明です。熱がないという事実だけで、出勤の可否を自己判断しないこと。まずは耳鼻咽喉科を受診し、感染性の有無について医師の確定診断を得る。そして、その上で、自分の体調と相談して最終的な判断を下す。それが、自分にとっても、職場にとっても、最も誠実な対応と言えるでしょう。
熱なし耳下腺炎で仕事は休むべきか?出勤の判断基準