奥歯のあたりに何となく感じる違和感や鈍い痛み。それは、親知らずが生え始めているサインかもしれません。親知らずは、他の歯のようにスムーズに生えてくることばかりではなく、多くの場合、何らかの症状を伴います。最も一般的な兆候は、歯茎の腫れと痛みです。一番奥の歯茎がむず痒かったり、赤く腫れてきたりしたら注意が必要です。これは、歯が歯茎を突き破って外に出ようとする際に、周囲の組織が炎症を起こしているために生じます。この痛みは、食事の際に食べ物が当たったり、歯ブラシが触れたりすることで強くなることがあります。また、親知らずが斜めや横向きに生えようとすると、手前にある第二大臼歯をぐいぐいと押し始めます。この圧力によって、奥歯全体に痛みや圧迫感を感じることもあります。症状が進行すると、口が開きにくくなる「開口障害」を引き起こすこともあります。親知らずの周りで起きた炎症が、顎を動かす筋肉にまで広がってしまうためです。ひどい場合には、指が一本か二本しか入らないほど口が開かなくなり、食事や会話にも支障をきたします。さらに、炎症が強くなると、顎の下のリンパ節が腫れて痛みを感じたり、発熱や頭痛、倦怠感といった全身症状につながるケースも少なくありません。これらの症状は、風邪の症状と似ているため、親知らずが原因だと気づかないこともあります。もし、奥歯の周辺にこれまで感じたことのないような違和感や痛みが現れたら、それは体が発している重要な警告です。放置しておくと、症状が悪化して治療が大変になる可能性もあります。まずは鏡で口の中をよく観察し、早めに歯科医院を受診して専門家の診断を仰ぐことが、問題を最小限に抑えるための賢明な判断と言えるでしょう。