唇がただれてヒリヒリと痛む時、間違ったケアは症状をさらに悪化させてしまいます。一刻も早くこの辛さから解放されるために、自宅でできる、ただれを悪化させないための正しい応急処置を知っておきましょう。まず、何よりも優先すべきは「徹底的な刺激の回避」です。ただれている唇は、バリア機能が完全に壊れてしまった、いわば生傷と同じ状態です。ここに余計な刺激を与えないことが、回復への一番の近道となります。食事は、熱いもの、辛いもの、酸っぱいもの、しょっぱいものは絶対に避けてください。香辛料や柑橘類、醤油やソースなどは、患部に激痛をもたらすだけでなく、炎症を助長します。おかゆやスープ、豆腐、ゼリーなど、柔らかく、味付けの薄いものを選びましょう。飲み物も、ストローを使うなどして、できるだけ唇に触れないように飲む工夫が必要です。次に、「触らない、舐めない、むかない」の三原則を徹底します。気になって舌で舐めてしまうと、唾液の蒸発と共に唇の水分が奪われ、さらに乾燥が進みます。めくれた皮を指でむしり取る行為は、未熟な皮膚まで傷つけ、治りを遅らせる最悪の行為です。絶対にやめましょう。そして、「優しい保湿」を心がけます。ただし、ただれている時に、メントール配合のリップクリームなど、刺激の強いものを使うのは逆効果です。選ぶべきは、できるだけ純度が高く、添加物の少ない「ワセリン」です。ワセリンは、肌に浸透して何かをするのではなく、唇の表面に油分の膜を作ることで、水分の蒸発を防ぎ、外部の刺激から守る「保護」の役割を果たします。清潔な指にワセリンをとり、こすりつけるのではなく、優しく置くように塗布しましょう。また、患部を清潔に保つことは重要ですが、洗顔料や石鹸でゴシゴシ洗うのは禁物です。ぬるま湯で優しく洗い流す程度にとどめてください。これらの応急処置は、あくまで症状の悪化を防ぎ、自己回復力を助けるためのものです。数日経っても改善しない、あるいは悪化するようなら、迷わず皮膚科を受診しましょう。