親知らず抜歯の腫れに個人差がある訳
同じ日に親知らずを抜いたのに、友人はほとんど腫れなかったのに自分は顔がパンパンに腫れてしまった、という経験をすることがあります。なぜ、これほどまでに腫れの程度に個人差が生まれるのでしょうか。その理由は、いくつかの要因が複雑に絡み合っているからです。最大の要因は、抜歯した親知らずの状態、特に「生え方」です。上の親知らずは、骨が比較的柔らかい場所に生えていることが多く、まっすぐ生えていれば比較的簡単に抜けるため、腫れも少ない傾向にあります。一方、下の親知らずは、硬い下顎の骨の中にあり、さらに真横を向いていたり、骨の中に深く埋まっていたりする「埋伏歯」であることが少なくありません。このような難症例では、歯茎の切開範囲が広くなったり、歯を分割したり、骨を削る量が多くなったりします。当然、体への侵襲、つまりダメージが大きくなるため、術後の炎症反応も強く現れ、顔も大きく腫れやすくなるのです。また、抜歯にかかった時間も関係します。手術時間が長引けば長引くほど、周囲の組織への負担は大きくなり、腫れにつながります。個人の体質や年齢も無視できません。若い人の方が骨が柔らかく、治癒能力も高いため、比較的腫れが少なく、回復も早い傾向にあります。逆に、年齢が上がると骨が硬くなり、回復にも時間がかかるため、腫れが長引きやすいと言われています。喫煙習慣の有無や、持病の有無なども、体の免疫力や治癒能力に影響を与え、腫れの程度に関わってきます。このように、腫れの度合いは、親知らずの状態と個人の身体的条件によって大きく変わるのです。他人と比べるのではなく、自分の状態を正しく理解することが大切です。