耳の下や顎のあたりが腫れてきて、痛みも感じる。そんな時、多くの人が「何科の病院に行けばいいのだろう?」と迷います。風邪のような症状なら内科、子供なら小児科というイメージはあっても、耳の下の腫れとなると、専門の診療科は意外と知られていません。結論から言うと、大人が耳下腺の腫れや痛みを自覚した場合に、最も最初に、そして最も適切に相談すべき診療科は「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳、鼻、喉(咽頭・喉頭)の病気を専門とする診療科ですが、その領域は首から上の、脳と目を除いたほとんどの部分をカバーしています。耳下腺や顎下腺といった唾液を作る「唾液腺」の疾患は、まさに耳鼻咽喉科の専門分野のど真ん中なのです。耳鼻咽喉科医は、問診や触診に加えて、必要に応じてファイバースコープで喉の奥の状態を確認したり、超音波(エコー)検査で耳下腺内部の様子を詳しく観察したりすることができます。これにより、腫れの原因がウイルス性のものか、細菌性のものか、あるいは唾石(唾液の管にできる石)や腫瘍といった他の病気の可能性はないかを、専門的な視点から診断してくれます。では、他の診療科ではダメなのでしょうか。「内科」でも、初期の診断や対症療法は可能です。特に、発熱や全身の倦怠感など、全身症状が強い場合は、まず内科を受診するという選択も間違いではありません。しかし、原因を特定するための専門的な検査や、より詳細な診断となると、最終的には耳鼻咽喉科への紹介となるケースがほとんどです。また、子供のおたふく風邪(流行性耳下腺炎)のイメージから、「小児科」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、小児科はあくまで子供の病気を総合的に診る科であり、大人の場合は専門外となります。自己判断で診療科を選ぶことに不安がある場合は、病院の総合受付や相談窓口で症状を説明すれば、適切な科へ案内してくれます。しかし、耳の下の腫れという明確な症状がある場合は、遠回りせずに、最初から耳鼻咽喉科の看板を掲げているクリニックや病院を受診するのが、最もスムーズで確実な選択と言えるでしょう。