唇がただれてしまうと、見た目も気になりますし、食事や会話も辛く、憂鬱な気分になりますよね。市販の薬で様子を見ようか、それとも病院へ行くべきか、悩む方も多いでしょう。ほとんどの唇のトラブルはセルフケアで改善しますが、中には専門医による治療が必要なケースも少なくありません。ここでは、医療機関の受診を強くお勧めする「危険なサイン」について解説します。まず、最も重要な判断基準が「症状の期間と経過」です。ワセリンなどで保湿し、刺激を避けるなどのセルフケアを続けても、一週間から二週間以上、全く改善の兆しが見られない、あるいはむしろ悪化している場合は、単なる乾燥や荒れではない可能性が高いです。専門医による診断が必要な状態と考えましょう。次に、「症状の範囲と見た目」も重要なサインです。ただれが唇だけでなく、その周りの皮膚にまで広がっている場合や、唇に「水ぶくれ」がたくさんできている場合は、口唇ヘルペスなどのウイルス感染症が疑われます。この場合、抗ウイルス薬による治療が必要となるため、速やかに皮膚科や内科を受診してください。また、ただれだけでなく、強い腫れや、じゅくじゅくとした滲出液(しんしゅつえき)が止まらない、分厚いかさぶたができる、といった激しい炎症症状がある場合も、市販薬では対応が難しいため、受診が必要です。さらに、「強いかゆみ」を伴う場合も注意が必要です。これは、口紅やリップクリームなどによるアレルギー性の接触皮膚炎(かぶれ)の典型的な症状です。原因となっている物質を特定し、接触を断つとともに、ステロイド外用薬などによる適切な治療が必要となります。そして、頻度は低いものの、最も警戒すべきなのが、ただれやびらんが長期間治らず、しこりのような硬さを伴う場合です。これは、口腔がんの一種である「口唇がん」の初期症状である可能性もゼロではありません。これらのサインに一つでも当てはまる場合は、「そのうち治るだろう」と自己判断で放置せず、勇気を出して皮膚科や歯科、口腔外科などの専門医に相談してください。