あれは、仕事の繁忙期で、連日深夜までの残業が続いていた時のことでした。心身ともに疲れがピークに達していたある朝、右下の奥歯の歯茎に、妙な違和感を覚えました。鏡で見ると、一番奥の歯の周りが赤くぷっくりと腫れています。その時は、「疲れているからかな」と軽く考え、いつも通りの歯磨きで済ませました。しかし、その日の午後から、違和感は明確な痛みへと変わっていきました。ズキズキと脈打つような痛みで、仕事に集中できません。夜には、食事をするのも辛いほどになり、食べ物が当たると激痛が走ります。週末まで我慢しようと思いましたが、翌朝には頬まで少し腫れているような気がして、恐怖を感じ、慌てて会社の近くの歯科医院に駆け込みました。レントゲンを撮ってもらうと、歯科医師から告げられたのは「親知らずが原因の、典型的な智歯周囲炎ですね」という診断でした。私の親知らずは横向きに埋まっており、その手前の歯との間にできた隙間に細菌が入り込み、疲れで免疫力が落ちたことで急性炎症を起こしたとのことでした。その日は、炎症を起こしている部分を洗浄・消毒してもらい、抗生物質と痛み止めを処方されました。薬を飲むと、数日で嘘のように痛みと腫れは引いていきました。しかし、歯科医師からは「これは根本的な解決ではありません。疲れが溜まったりすると、また同じように腫れますよ。繰り返さないためには、原因である親知らずを抜くのが一番です」と告げられました。正直、親知らずの抜歯は怖いイメージしかなく、しばらく躊躇していましたが、その数ヶ月後に、またしても仕事が忙しくなったタイミングで、見事に同じ場所が腫れ上がったのです。あの辛い痛みを二度も経験し、私はついに抜歯を決意しました。抜歯は想像していたよりも大変でしたが、術後の経過は順調で、何よりも「またあの痛みに襲われるかもしれない」という不安から解放されたことが、精神的に非常に大きな救いとなりました。この経験は、体の小さなサインを無視せず、根本的な原因に対処することの重要性を、私に痛感させてくれました。
奥歯の歯茎の腫れとの闘い