奥歯の歯茎の特定の場所に、まるでニキビのような小さな「おでき」ができては、しばらくすると潰れて、また忘れた頃に同じ場所にできる。そんな症状を繰り返している場合、それは「歯根破折(しこんはせつ)」、つまり歯の根が割れていることを示す、非常に重要なサインかもしれません。この歯茎にできるおできは「フィステル(瘻孔)」と呼ばれ、歯の根の先で起きた感染によって溜まった膿が、出口を求めて歯茎までトンネルを作ったものです。そして、歯根破折は、このフィステルの原因として非常に多いものの一つです。歯根破折は、特に「神経を抜いた歯(失活歯)」に起こりやすいトラブルです。神経を抜いた歯は、血液の供給がなくなるため、時間とともに水分を失い、枯れ木のようにもろく、割れやすくなります。そこに、長年にわたる日々の食事の力や、歯ぎしり・食いしばりなどの過大な力がかかり続けることで、ある日、歯の根に垂直に「ひび」が入ったり、完全に「破折」してしまったりするのです。歯の根に亀裂が入ると、その隙間から口の中の細菌が、歯の内部、そして歯を支える骨の中へと侵入していきます。すると、体は細菌と戦うために炎症反応を起こし、亀裂の周囲に膿が溜まります。この膿が、フィステルとなって歯茎の表面に現れるのです。フィステルは、膿が排出されると一時的に小さくなりますが、感染の根本原因である歯の根の亀裂が存在する限り、膿は再び溜まり、腫れを繰り返します。歯根破折の他の症状としては、「噛んだ時の鈍い痛み」や、「歯が浮いたような違和感」などが挙げられます。しかし、痛みはそれほど強くないことも多く、この繰り返すフィステルが唯一の自覚症状であることも少なくありません。残念ながら、一度割れてしまった歯の根を、元通りに接着させて治すことは、現在の歯科医療技術では極めて困難です。感染が周囲の骨に広がり、健康な隣の歯にまで悪影響を及ぼす前に、多くの場合、「抜歯」が第一の選択肢となります。