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大人の熱なし耳下腺炎その正体とは
ある朝、鏡を見てみると片方の耳の下から顎にかけてがぷっくりと腫れている。触ると少し痛みもある。しかし、熱を測ってみても平熱。多くの人が「耳下腺炎」と聞くと、高熱が出て顔がパンパンに腫れる子供の「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)」を想像するため、大人が熱もなく片側だけ腫れるという状況に戸惑うかもしれません。しかし、大人が経験する耳下腺炎は、必ずしも高熱を伴うとは限らず、その原因も一つではありません。まず考えられるのが、ウイルス感染による「流行性耳下腺炎」です。ムンプスウイルスに感染することで発症し、非常に強い感染力を持ちます。子供の頃に予防接種を受けていなかったり、感染したことがなかったりする大人がかかると、高熱や強い痛みを伴うことが多いですが、中には症状が軽く、微熱程度、あるいは全く熱が出ないケースも存在します。熱がないからといって、おたふく風邪の可能性を完全に否定することはできません。次に、大人の耳下腺炎で意外と多いのが「反復性耳下腺炎」です。これは、明確な原因は不明ですが、ストレスや疲労、アレルギーなどが関与していると考えられており、その名の通り何度も繰り返し耳下腺の腫れと痛みを引き起こします。多くの場合、熱は出ないか、出ても微熱程度で、数日から一週間ほどで自然に治まるのが特徴です。ウイルス性ではないため、他人にうつる心配はありません。また、細菌が耳下腺に感染して起こる「化膿性耳下腺炎」という可能性もあります。これは、脱水や口腔内の不衛生などが原因で、口の中の細菌が唾液の管を逆流して感染するものです。通常は発熱を伴いますが、初期段階や軽症の場合は熱が出ないこともあります。その他にも、唾液の管に石が詰まる「唾石症」や、自己免疫疾患である「シェーグレン症候群」などが原因で耳下腺が腫れることもあります。このように、大人が熱もなく耳の下が腫れる原因は多岐にわたります。自己判断は非常に危険です。特に、感染力の有無を正しく判断するためにも、まずは耳鼻咽喉科を受診し、専門医による正確な診断を受けることが何よりも重要です。