生活
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下の親知らずを抜くと特に腫れる理由
親知らずの抜歯を経験した人の多くが、「上の歯は楽だったけど、下は本当に大変だった」と口を揃えます。実際に、下の親知らずの抜歯は、上の親知らずに比べて顔が腫れやすく、痛みも強く出る傾向にあります。これには、解剖学的な明確な理由が存在します。まず、顎の骨の硬さが全く違います。上顎の骨は、スポンジのように比較的柔らかく、多孔質です。そのため、上の親知らずは比較的スムーズに抜けることが多く、手術による組織へのダメージも少なくて済みます。一方、下顎の骨は、非常に緻密で硬く、まるでコンクリートのようです。この硬い骨の中に埋まっている下の親知らずを抜くためには、歯を分割したり、周囲の骨をドリルで削ったりする必要がある場合が多くなります。当然、骨を削る量が多くなればなるほど、手術による侵襲は大きくなり、術後の炎症反応、つまり腫れや痛みも強く現れるのです。また、血流の違いも関係しています。下顎の骨の周りには太い血管や神経が通っており、組織も豊富です。そのため、手術によるダメージに対して、より活発な炎症反応が起きやすく、腫れにつながりやすいと考えられています。さらに、重力の影響も無視できません。抜歯後に出る血液や浸出液などの液体は、重力に従って下の方に溜まりやすい性質があります。そのため、下の親知らずを抜いた場合、腫れの原因となる液体が頬の下の方や顎のラインに沿って溜まりやすく、見た目にも腫れが目立ちやすくなるのです。これらの理由から、下の親知らず、特に骨の中に埋まっているケースの抜歯は、術後の腫れを覚悟しておく必要があると言えます。