ある40代の男性患者様、Bさんの事例をご紹介します。Bさんは初診時、ブラッシング時の出血と、歯茎のむず痒さを強く訴えられていました。視診では全顎的に軽度の歯肉炎が認められ、特に奥歯の隣接面に深いポケットが形成されつつありました。Bさんは「毎日10分以上丁寧に磨いているのに、なぜ悪くなるのか」と落胆されていましたが、詳しく伺うと、フロスは週に1回程度、気が向いた時にしか使っていないことが判明しました。そこで私は、Bさんの広い歯間と、詰め物が多いという特徴に合わせ、ワックス加工が施された太めのロールフロスと、仕上げ用のY字型フロスを併用するプログラムをお勧めしました。Bさんに対する個別のアドバイスでは、単に通すだけでなく、歯の根元でフロスを1ミリメートルほど上下させる「ポケット内清掃」を重点的に指導しました。最初は出血を恐れて躊躇されていたBさんでしたが、「出血するのは炎症がある証拠で、汚れを取り続ければ必ず止まります」という私の言葉を信じて、3週間毎日フロッシングを継続されました。その結果、1ヶ月後の再診では劇的な変化が見られました。赤くブヨブヨとしていた歯茎は、見事に引き締まったサーモンピンクへと回復し、検査時の出血(BOP)は以前の20パーセント以下にまで激減していたのです。Bさんは「フロスをするようになってから、食べ物の味がより鮮明に感じられるようになり、口の中の爽快感が1日中続くようになった」と、晴れやかな表情で報告してくださいました。この事例から学べるのは、どんなに優れた歯ブラシを使っても、フロスという「パズルの最後の1ピース」が欠けていれば、口腔内の健康は完成しないということです。Bさんが成功した要因は、歯科医がお勧めする適切なツールを使い、正しいテクニックを忠実に実践したことにあります。歯科医のアドバイスは、単なる知識の伝達ではありません。Bさんのように、患者様一人ひとりの生活スタイルや、現在抱えている問題の根本を解決するための「具体的な処方箋」なのです。歯科医が勧めるフロスは、時に市販品より高価に感じられるかもしれませんが、その後の治療費の削減と、何物にも代えがたい健康な体を取り戻せることを考えれば、最高の投資と言えるでしょう。Bさんの事例は、今この瞬間からフロスを始めようとしているすべての方にとって、大きな励みとなるはずです。
歯科医のアドバイスで歯茎の健康を取り戻した事例