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腱鞘炎とは何か?痛みのメカニズムと主な原因
手首や指の付け根にズキズキとした痛みや、動かしにくさを感じたら、それは「腱鞘炎(けんしょうえん)」かもしれません。近年、スマートフォンの長時間利用やパソコン作業の増加により、多くの人がこの症状に悩まされています。効果的な治し方を理解するためには、まず、なぜ腱鞘炎が起こるのか、そのメカニズムと原因を知ることが不可欠です。私たちの手や指は、「腱(けん)」というヒモ状の組織によって、筋肉と骨が繋がれており、筋肉が収縮することで腱が引っ張られ、指や手首を曲げ伸ばしすることができます。この腱は、骨から浮き上がらないように、「腱鞘(けんしょう)」というトンネル状の組織で覆われています。つまり、腱は腱鞘というトンネルの中を滑るように動くことで、スムーズな指の動きを実現しているのです。腱鞘炎は、この腱と腱鞘が、何らかの原因で擦れ合い、炎症を起こしてしまう状態を指します。通常であれば、腱鞘の内部は滑液で満たされ、腱は滑らかに動くことができます。しかし、指や手首を使いすぎると、腱と腱鞘の間で過剰な摩擦が生じます。この摩擦が繰り返されることで、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷ついたりして炎症が起こり、痛みや腫れ、熱感といった症状が現れるのです。さらに炎症が進行すると、腱鞘のトンネルが狭くなり、腱の動きが妨げられ、「ばね指」のように、指がカクカクと引っかかるような症状が出ることもあります。腱鞘炎の主な原因は、一言で言えば「使いすぎ(オーバーユース)」です。パソコンのキーボードやマウスの操作、スマートフォンのフリック入力、ピアノやギターなどの楽器演奏、育児での赤ちゃんの抱っこ、工場でのライン作業など、同じ動作を繰り返し行う職業や生活習慣を持つ人に多く発症します。また、女性ホルモンの変化も関与しているとされており、妊娠中や産後、更年期の女性に発症しやすいことも特徴です。腱鞘炎は、単なる使い痛みと放置せず、そのメカニズムを理解し、早期に適切な対処を始めることが、症状の悪化や慢性化を防ぐための鍵となります。