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舌を噛む悩みは専門家への相談が鍵
睡眠中に舌を噛むという問題は、多くの人が「そのうち治るだろう」と軽く考えがちです。しかし、この症状が頻繁に、そして長期間にわたって続く場合、それは体からの重要なサインかもしれません。安易な自己判断で放置するのではなく、専門家である歯科医師に相談することが、根本的な解決への最も確実な道筋です。歯科医院では、まず問診を通じて患者の生活習慣、ストレスの度合い、症状の頻度などを詳しく聞き取ります。その後、口腔内を詳細に診察し、舌に付いた歯の跡の位置や深さ、歯並び、噛み合わせの状態、歯のすり減り具合などをチェックします。これにより、舌を噛む原因が、歯ぎしりや食いしばりによるものなのか、あるいは歯並びや顎の骨格といった物理的な問題に起因するのかを的確に判断することができるのです。原因が歯ぎしりや食いしばりにあると診断された場合、最も一般的な治療法は「マウスピース(ナイトガード)」の作製です。患者一人ひとりの歯型に合わせて精密に作られたマウスピースは、睡眠中に装着することで、上下の歯が直接当たるのを防ぎます。これにより、歯や顎への負担が軽減されるだけでなく、歯と舌の間に物理的な壁ができるため、舌を噛むのを効果的に防ぐことができます。また、噛み合わせの不具合が原因である場合は、歯を少しだけ削って高さを調整したり、場合によっては矯正治療を提案されたりすることもあります。さらに、舌を噛むという症状の背後に、睡眠時無呼吸症候群などのより深刻な病気が隠れている可能性もゼロではありません。歯科医師は、必要に応じて医科との連携も視野に入れ、総合的な観点から患者にとって最善の道を示してくれます。たかが舌の痛みと侮らず、勇気を出して専門家の扉を叩くこと。それが、健やかな毎日と質の高い睡眠を取り戻すための、賢明な選択と言えるでしょう。